haruyokoikoiのブログ 第2章

自業自得のACOの日記です。基本毎日更新です。

老舗の蕎麦屋 ふと思い出した祖父の横顔


予想に違わず波瀾の月曜日の幕開けです。
店頭からの問い合わせも多く、受話器の向こうからも喧騒が
伝わってきます。今にも泣き出しそうな声に、つい絆されて
仕事を増やしているポンコツです。はい、タダのお人好しです。


ちょっと遅めの昼休み、兎に角この喧騒から逃れたい、
社食以外の静かな所と行き着いた先は、柳を潜る何時もの蕎麦屋。


小上がりに案内されて、靴を脱ぎ、ひんやりした畳に触れた途端
緊張が解けていくのが分かります。
昼下がりの老舗の蕎麦屋、卵焼きを摘みに静かに日本酒を嗜む老紳士、
商談を終えたのか歓談しながら蕎麦を手繰る紳士達は界隈の旦那衆でしょうか。


若手のサラリーマンの胃袋を満たすには敷居の高い老舗の蕎麦屋
かきたまうどんで満足できるポンコツには絶好の隠れ家です。


仲居さんに出されたおしぼりで冷えた指先を暖めた後、お茶を
啜って一息つくと、ふと祖父の横顔を思い出しました。


上手に入れた緑茶の香り、手入れの行き届いた畳と、磨きぬかれた建具の匂い
匂いで此処まで鮮やかに記憶が甦るものかと人体の緻密さに驚きを感じます。
ああ、でもこれは、にしん蕎麦が好物だった祖父が好みそうな佇まいです。


「ちょっと蕎麦でも食べてかえろか。」幼い私を連れて良く立ち寄った
南海電車2階改札前に有った蕎麦屋は未だ有るのかしら。
にしん蕎麦の祖父に、きつねうどんか、かきたまうどんの私。
笑顔の祖父と向かい合わせで食べる、かきたまうどんはいつもと違う
大人の味がしたような記憶があります。


そうだ、祖父も上京した時は此処に来たんじゃないかしら。
ふとした思いつきは、徐々に確信に変わります。
榮太郎の梅干し飴と黒飴が好物で、いつも書斎に有った赤い缶。


ああ、そうか、そういうことか。


身体の芯から何かが解れたような気がしました。
次は、此処で、にしん蕎麦を食べよう。



すっかり疲れも取れた気がして、意気揚々と戻った職場ですが
現実に引き戻されて、3時のオヤツはサルタノールとプレドニンでした。
お後が宜しいようで。

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